症例報告
破骨細胞類似の巨細胞を伴った膵癌の1例
岩瀬 弘敬, 呉山 泰進, 桐山 昌伸, 伊藤 由加志, 古田 吉行*
セントラル病院外科(現名古屋市立大学第2外科, 古田外科*)
膵癌に破骨細胞類似の巨細胞(osteoclast-like giant cell)を伴った,きわめてまれな1例を経験した.
症例は54歳の男性で心窩部痛と黄疸を主訴に来院し,逆行性胆管膵管造影で肝内胆管および総胆管結石症と診断された.手術時,総胆管内は凝血塊で充満し,肝十二指腸間膜,胆嚢頸部には腫瘍浸潤が認められ,胆嚢摘出術と外胆道瘻造設術が行われた.腫瘍浸潤部の生検では破骨細胞類似の巨細胞を伴う腺癌が存在した.患者は術後1か月で肝不全により死亡し,剖検で膵頭部に同様の巨細胞をもつ鶏卵大の腫瘍が認められた.
本例のような膵癌は巨細胞を含む多形細胞癌とは別に取り扱われており,しばしば強い局所浸潤を示すと報告されている.しかし巨細胞自体の組織由来については意見が分かれ,最近では破骨細胞類似にもかかわらず,電顕や免疫組織化学で上皮性とする意見が多い.
索引用語
pancreatic cancer, osteoclast-like giant cell tumor
日消外会誌 23: 1186-1190, 1990
別刷請求先
岩瀬 弘敬 〒467 名古屋市瑞穂区瑞穂町字川澄1 名古屋市立大学医学部第2外科
受理年月日
1989年12月13日
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