原著
食道癌の術前頸部超音波検査
井上 晴洋, 遠藤 光夫, 吉野 邦英, 滝口 透, 河野 辰幸, 山崎 繁, 下重 勝雄, 鈴木 知行, 伊藤 金一, 山際 明暢
東京医科歯科大学第1外科
食道癌100例について術前頸部超音波検査を施行し,術中所見および病理組織検査成績と対比検討した.頸部超音波検査の描出範囲として,とくに縦隔の最深部は,右側では腕頭動脈の起始部近傍,左側では左総頸動脈,左鎖骨下動脈の大動脈弓からの起始部までの十分な観察が可能であった.また上縦隔のリンパ節については術中頸部エコーを施行し術野の所見と対比検討した.描出されたリンパ節全体の転移度によるsensitivityは91%,specificityは95%,overall accuracyは94%であった.上縦隔に限ってもsensitivityは91%,specificityは89%,accuracyは90%であった.したがって頸部超音波検査は食道癌のリンパ節転移診断において,頸部のみならず,上縦隔の診断においても十分な情報を提供し,超音波内視鏡検査およびcomputed tomographyと相補しながら,食道癌の進行度の把握と術式の決定において必要不可欠な検査であるといえる.
索引用語
preoperative evaluation for esophageal cancer, cervical ultrasonography, cervical lymphnode metastasis of esophageal cancer
日消外会誌 23: 1778-1784, 1990
別刷請求先
井上 晴洋 〒113 文京区湯島1-5-45 東京医科歯科大学第1外科
受理年月日
1990年2月14日
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