原著
胸部食道癌術後の誤嚥に関する検討
米川 甫, 島 伸吾, 後藤 正幸, 杉浦 芳章, 吉住 豊, 田中 勧
防衛医科大学校第2外科
1987年までの5年間に右開胸・開腹によリ一期的切除再建術を施行した胸部食道癌54例を対象として,術後の誤嚥につき検討した.
1)術後の誤嚥発生率は38.9%であった.
2)患者の年齢・性別・癌の進行度は誤嚥の発生率に関係しなかった.しかし癌の主占拠部位が胸部上部・中部の症例では下部食道の症例より誤嚥が有意に多かった.
3)年度別にみると,誤嚥発生率は83・84年の11.5%から85~87年には64.3%に有意に増加した.上縦隔のリンパ節郭清個数(#105+106)は83年には平均2.0個であったが毎年増加し,87年には6.4個であった.またその郭清個数は誤嚥例では誤嚥(-)例より多い傾向で,上縦隔郭清と誤嚥の関係が示唆された.
4)消化管再建経路別には,胸壁前,胸骨後,胸腔内の順に誤嚥の発生率が高かった.
5)反回神経麻痺と誤嚥とにも密接な関係が認められたが,一部には麻痺があっても誤嚥しない症例・その逆の症例もみられた.
索引用語
carcinoma of the esophagus, postoperative bronchial aspiration, recurrent nerve palsy
日消外会誌 23: 1790-1795, 1990
別刷請求先
米川 甫 〒177 所沢市並木3-2 防衛医科大学校第2外科
受理年月日
1990年2月14日
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