胃十二指腸球部温存十二指腸切除術後の胃内外分泌機能に関する実験的検討

小野　精一

順天堂大学医学部外科学第1教室（主任：榊原 宣教授）

　膵頭十二指腸切除術の合併症の1つである吻合部潰瘍の成因を究明するために，胃十二指腸球部温存十二指腸切除術（以下温存術）後の胃内外分泌能が十二指腸球部温存の範囲によってどのように変化するかを実験的に検討した．温存術後の基礎酸分泌量，最高酸分泌量およびinsulin刺激時の酸分泌量は，十二指腸球部温存範囲1 cmで216.7％，50.3％，108.5％と著明な増加率を示したのに対し，十二指腸球部温存範囲3 cmではそれぞれ5.5％，3.0％，1.9％のごくわずかな増加率であり，十二指腸球部の温存範囲が大きいものほど，増加率は低かった．また，secretinは幽門輪より2 cmから10 cm遠位に高濃度に分布していた．以上の成績より，術後の酸分泌増加は，duodenal brakeの破綻によることが示唆された．また，十二指腸温存範囲3 cmで術後生理的な胃内外分泌機能を示し，この温存範囲で術後吻合部潰瘍の発生を十分予防しえることが可能であることがわかった．

索引用語
duodenectomy with preservation of the stomach and duodenal bulb, gastric functions, stomal ulcer, secretin in the duodenal and small intestinal mucosa

別刷請求先
小野　精一　〒113　文京区本郷2-1-1　順天堂大学第1外科

受理年月日
1990年2月14日

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