原著
肝硬変性門脈圧亢進症における胃壁循環異常に対する膵グルカゴンの関与
吉田 隆典, 御手洗 義信, 小林 迪夫
大分医科大学第1外科
肝硬変における胃壁循環異常の成因として,膵グルカゴンの関与について臨床的検討(肝硬変性食道静脈瘤30例と対照12例で胃壁組織血流量を測定,さらに肝硬変群では門脈系の循環動態,酸素分圧および末梢血膵グルカゴンを測定)を行い,以下の結果を得た.(1)肝硬変群では,対照に比べ,有意の胃粘膜血流の低下と胃粘膜下血流の増加を認めた.(2)膵グルカゴンは,胃粘膜下血流と正の相関(γ=0.430)を示した.(3)膵グルカゴンは,左胃静脈・末梢動脈血酸素分圧比と正の相関(γ=0.545)を示した.
さらに実験的検討(高グルカゴン血症ハムスターを作製,腺胃全層血流量を測定)を行い,以下の結果を得た.(4)高グルカゴン血症ハムスターの腺胃全層血流量は,対照に比べ,有意の高値を示した.
以上の臨床的ならびに実験的検討から,膵グルカゴンは,肝硬変性門脈圧亢進症における胃壁循環異常発生の一要因と考えられた.
索引用語
portal hypertension, liver cirrhosis, gastric hyperdynamic circulation, glucagon, hyperglucagonemic hamster
日消外会誌 23: 1830-1837, 1990
別刷請求先
吉田 隆典 〒879-56 大分県大分郡挾間町医大ケ丘1-1 大分医科大学第1外科
受理年月日
1990年2月14日
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