症例報告
広範に主膵管,分枝膵管に進展した粘液産生膵癌の2例
小宮山 明, 初瀬 一夫, 望月 英隆, 前村 誠, 国松 範行, 玉熊 正悦, 寺畑 信太郎1)
防衛医科大学校第1外科, 同 検査部1)
広範に主膵管および分枝膵管に腫瘍の進展を見た2例の粘液産生膵癌を経験した.症例は74歳と46歳の男性でいずれも上腹部痛を主訴とし,各種画像診断にて主膵管の拡張と粘液貯留が疑われ粘液産生性膵腫瘍の診断のもとに膵全摘術が行われた.第1例は主膵管は粘液貯留によって著明に拡張し,腫瘍細胞が一部に隆起性病変を形成すると共にはば全膵管内に表層進展を示していた.組織学的には非侵潤性の乳頭状腺癌であった.一方,第2例では膵管内粘液貯留は比較的軽度で,主膵管および分枝は腫瘍の充満により拡張し,膵全体が腫瘍により置換される様相を呈した.組織学的には非浸潤性の乳頭管状腺癌であった.
粘液産生膵癌の既報告例のうち膵頭部から尾部にわたり進展する非浸潤性膵管癌は2例に過ぎず,貴重な症例と考えられた.また本腫瘍の病理学的特徴から膵全摘術の適応が比較的高いと考えられた.
索引用語
mucin producing pancreatic tumor, pancreatic cancer, total pancreatectomy
日消外会誌 23: 1902-1906, 1990
別刷請求先
小宮山 明 〒359 所沢市並木3-2 防衛医科大学校第1外科
受理年月日
1990年2月14日
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