症例報告
粘液産生膵癌の1切除例
落合 登志哉, 稲葉 征四郎, 近藤 雄二, 土屋 邦之, 川合 寛治, 上田 泰章
国立奈良病院外科
粘液産生膵癌は,いまだ,臨床,病理の面で多くの未解決の問題を抱えた疾患である.当科では,最近,主膵管にび漫性拡張を認めた粘液産生膵癌の特徴をもつ,膵嚢胞腺癌の1切除例を経験した.症例は73歳,女性で主訴は発熱.各種検査の結果よりいわゆる粘液産生膵癌を疑い膵頭十二指腸切除術を施行した.標本は主膵管に腫瘍を認めず,膵頭部の嚢胞状拡張に乳頭状腫瘍を認めたがこの嚢胞状拡張が分枝の拡張であるかは不明であった.組織診断はcystadenocarcinomaであり,膵癌取扱い規約のPh,T2,S0,Rp0,CH0,DU0,PV0,A0,Plx(-),P0,H0,N(-),M(-)stage II,TNM分類ではpT2,pN0,pM0,stage Iであり,治癒切除であった.
本症例を粘液産生膵癌の分枝型とするか,従来の膵嚢胞腺癌が主膵管と交通し主膵管を拡張させたものにするかは困難であるが両者を粘液産生膵腫瘍というひとつの範畴として考えても良いように思われる.
索引用語
mucin-producing pancreatic tumor, mucin-producing pancreatic cancer, cystadenocarcinoma of the pancreas
日消外会誌 23: 1907-1911, 1990
別刷請求先
落合登志哉 〒104 中央区築地5-1-1 国立がんセンター病院外科
受理年月日
1990年3月7日
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