胸部食道癌の上縦隔リンパ節転移様式―非切除進行症例computed tomography所見からみた検討―

松原　敏樹

癌研究会付属病院外科

　非切除となったリンパ系高度進行胸部食道癌50例のcomputed tomography所見から胸部食道癌の縦隔内リンパ節転移形態を検討した．
　1．反回神経沿線のリンパ節（右反回神経節，左傍気管節，左気管気管支節）および気管分岐下節は近位リンパ節群と考えられた．
　2．陽性リンパ節の分布からみて，右反回神経節から右内下深頸節および右上部気管前節への経路，右上部気管前節や分岐下節から右下部気管前節への経路，左気管気管支節から大動脈弓下節への経路は近位リンパ節からの縦隔内転移経路として重要と推測された．
　3．左内下深頸節，下部気管前節，前縦隔節，大動脈弓下節，大動脈前節の明かな陽性例は極めて高度の進行癌症例であった．
　4．深頸節転移例の進行度には左右差がみられた．
　5．右深頸節転移を触知したり右反回神経麻痺があっても，縦隔転移状況によっては手術によって予後の改善が期待できる．

索引用語
esophageal neoplasm, computed tomography in esophageal cancer, staging of esophageal cancer, surgery for cancer of the thoracic esophagus, lymph node metastasis in esophageal cancer

別刷請求先
松原　敏樹　〒170　豊島区上池袋1-37-1　癌研究会附属病院外科

受理年月日
1990年4月11日

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