原著
消化性潰瘍症患者の胃液中ペプシン分泌と血中group I pepsinogen値に及ぼす選択的近位迷走神経切離術の影響
山本 俊郎
横浜市立大学医学部第2外科(主任教授:土屋周二)
十二指腸潰瘍症(DU群)27例,胃潰瘍症(GU群)25例の胃の酸,ペプシン分泌と血清group I pepsinogen(PGI)を選択的近位迷走神経切離術(SPV)の前後で比較し,その影響を検討した.
胃液中の酸,ペプシン分泌はSPV後に低下し,その程度はDU群で著しかった.空腹時血清PGI値はDU群,GU群では82.9 ng/ml,76.4 ng/mlで,対照の48.5 ng/mlに比べて高く(p<0.01),迷切後には両群とも低値となった.インスリンを用いた酸分泌刺激による血清PGIの変化はDU群では刺激後60分から90分まで増加したが(p<0.05),SPV後には有意な変化はなかった.GU群ではSPV前後とも刺激後に血清PGI値に有意な変化はなかった.
以上の結果から,主細胞でのpepsinogenの合成,血中移行および胃内腔への放出には迷走神経が関与しており,その程度は胃潰瘍症患者より十二指腸潰瘍症患者の方が著しいと考えられた.
索引用語
serum group I pepsinogen, pepsin, selective proximal vagotomy, peptic ulcer
日消外会誌 23: 1992-1999, 1990
別刷請求先
山本 俊郎 〒232 横浜市南区浦舟町3-46 横浜市立大学医学部第2外科
受理年月日
1990年4月11日
|
PDFを閲覧するためにはAdobe Readerが必要です |
|