症例報告
急性腹膜炎で発症した腸間膜脂肪織炎の1例
曽根 純之, 小棚木 均, 瀬戸 泰士1)
秋田大学医学部第1外科, 明和会中通病院1)
腸間膜脂肪織炎(mesenteric panniculitis)は,腸間膜脂肪織に生ずるきわめてまれな非特異性の炎症疾患である.
われわれは,横行結腸間膜に嚢胞状に発生し,感染,穿破して急性腹膜炎で発症した脂肪織炎の1例を経験した.症例は,11歳の男児で,発熱,腹痛を主訴に外来受診した.腹部全体に圧痛と筋性防御があり,白血球数の上昇を認めた.腹部超音波で,上腹部に嚢胞状の腫瘤を認めた.急性腹膜炎として緊急手術を施行,横行結腸間膜に嚢胞状で一部穿破した腫瘤を認めた.嚢胞切除と腹腔ドレナージ術を施行した.切除標本の病理組織学検査にて,腸間膜脂肪織炎と診断された.
本症例は,急性腹膜炎にて発症した点,また嚢胞状を呈していた点など今まで報告のないものであった.急性期の腸間膜脂肪織炎と考えられた.
索引用語
mesenteric panniculitis, cystic lesion of the transverse mesocolon
日消外会誌 23: 2138-2141, 1990
別刷請求先
曽根 純之 〒010 秋田市本道1-1-1 秋田大学医学部第1外科
受理年月日
1990年4月11日
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