症例報告
良性直腸潰瘍の3症例
中村 守, 黒郷 文雄, 内藤 伸三, 熊谷 仁人, 福本 巧, 斎藤 洋一1)
市立加西病院外科, 神戸大学第1外科1)
良性直腸潰瘍は,比較的まれな疾患とされていたが,最近その報告例が増えつつある.われわれは,大量の下血をもってはじまり,特徴的な臨床像や内視鏡像を呈し,短期間で治癒した3例の良性直腸潰瘍を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する.
2症例は,ともに基礎疾患として脳血管疾患を有している患者で,下部直腸に潰瘍を伴う腫瘤を形成し,比較的短期間で治癒したので,急性出血性潰瘍が最も考えられた.1症例はペースメーカーを留置している患者で,骨盤骨折にて入院.上部直腸にアフタ様潰瘍が多発し,やはり短期間で治癒したが,原因がはっきりと特定されなかった.
下血に対しては,病変部位や原因を明らかにすべく,積極的に内視鏡検査を施行するべきであろう.また内視鏡検査で肉眼的に癌が疑われても,繰り返し生検を行うことが重要であると考えられた.
索引用語
benign rectal ulcer, bleeding from the lower part of the digestive tract
日消外会誌 23: 2142-2146, 1990
別刷請求先
中村 守 〒675-23 加西市北条町横尾1-13 市立加西病院外科
受理年月日
1990年4月11日
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