卒後教育セミナー
低位前方切除後の排便機能
今 充
弘前大学医学部第2外科
低位前方切除術を施行後1年以上経過し,諸機能がほぼ安定して再発徴候の認められない直腸癌患者103例を対象とし,患者自身による記入方式で,術後排便機能に関するアンケート調査を施行した.対象を肛門縁から吻合部までの距離が6 cm以下を下部直腸(Rb)群48例,それ以上の上部直陽(Rs・Ra)群55例に二大別し検討を加えた.その結果,Rb群では排便回数,soilingの程度,便の硬さなどの愁訴がRs・Ra群に比し高い傾向が知られた.
さらに,アンケート調査の愁訴と自已評価の各スコアに対して直腸内圧検査成績との関係に統計的検討を加えた.その結果,Rb群にて肛門管静止圧,吻合部口側腸管律動波の周波数及び振幅が自己評価の程度に密接に関与していることが示された.総じて,低位前方切除例の排便機能は日常生活に大きな障害を及ぼさぬことが知られたが,術後排便障害への愁訴の寡多は患者の職業,家族環境などまでを含んだものであることを知らねばならない.
索引用語
low anterior resection, anal function, manometric study
日消外会誌 23: 2163-2167, 1990
別刷請求先
今 充 〒036 弘前市在府町5 弘前大学医学部第2外科
受理年月日
1990年5月9日
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