原著
胃癌における還流血carcinoembryonic antigen(CEA)値ならびに還流末梢血CEA較差と予後との関連
出口 浩之1), 多淵 芳樹2), 今西 築3), 斎藤 洋一3)
三菱神戸病院外科1), 神戸大学医療技術短期大学部2), 神戸大学医学部第1外科3)
免疫組織化学的にcarcinoembryonic antigen(以下CEAと略)の局在を確認した胃癌切除39例を対象として,腫瘍還流静脈血中CEA値(dCEA)ならびに還流血と末梢血とのCEA較差(d-pCEA較差)と術後患者の転帰との関連を検討した.dCEAの平均値と5 ng/ml以上の陽性率は生存26例では17 ng/ml・39%,癌死13例では227 ng/ml・77%であり,死亡例は生存例に比べ陽性率は高い傾向にあり,平均値は有意に高値を示した.死亡例のd-pCEA較差の平均値199 ng/mlは生存例の15 ng/mlよりも有意に高値であった.dCEA陽性20例の生存率曲線は陰性19例よりも有意に不良で,3年生存率は前者45%・後者78%であった.また,d-pCEA較差5 ng/ml以上を示す16例の生存率曲線はそれ未満の23例よりも有意に不良で,3年生存率は前者50%・後者69%であった.これらの結果は,dCEA定量が胃癌患者の予後の推定に有用であり,dCEAおよびd-pCEA較差が5 ng/ml以上の症例は予後不良例として臨床的に対処する必要があると考えられる.
索引用語
carcinoembryonic antigen levels of draining venous blood, draining-peripheral carcinoembryonic antigen gradient, carcinoembryonic antigen producing gastric cancer, postoperative survival of gastric cancer, prognostic indicator of gastric cancer
日消外会誌 23: 2185-2190, 1990
別刷請求先
出口 浩之 〒652 神戸市兵庫区和田宮通6-1-34 三菱神戸病院外科
受理年月日
1989年11月8日
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