原著
腹部緊急手術症例の凝血学的検討
薄場 彰, 遠藤 豪一, 高原 光則, 又吉 一仁, 大石 明雄, 遠藤 幸男, 井上 仁, 元木 良一
福島県立医科大学第1外科
多臓器障害や汎発性血管内凝固症候群の発症と関係深いhypercoagulable stateの病態を検討する目的で,汎発性腹膜炎や消化管大量出血など緊急手術21例を対象に術前・術後の血小板・凝固・線溶各系の動態を観察した.
汎発性腹膜炎では術前よリトロンビン作用が亢進し,ショック合併例では術後血小板数が著減したが,一般に血小板系や線溶系への影響は軽微で,臓器障害の合併がなければ術後約1週間で回復した.フィブリノペプタイドA,フィブリノゲン,抗トロンビンIIIの消長が指標となった.消化管大量出血ではショック合併例が多く,トロンビン作用のほかに血小板や線溶作用も著明に亢進し,出血量と血小板数,プロトロンビン時間活性(PT)とがそれぞれ負の相関を示した.また高率に臓器障害を合併し回復が遷延した.血小板数,PTの消長が重要で,PTの動向は他に先行した.
索引用語
emergency surgery, blood coagulation, fibrinolytic activity, hypercoagulable state
日消外会誌 23: 2256-2263, 1990
別刷請求先
薄場 彰 〒960-12 福島市光ケ丘1 福島県立医科大学第1外科
受理年月日
1990年5月9日
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