症例報告
嚢腫内に結石を伴ったcholedochoceleの1症例
小熊 信, 大径 豊, 松浦 真吾*, 岩間 憲行1)
古川民主病院外科, *同 内科, 坂総合病院病理科1)
嚢胞内のみに結石を伴ったcholedochoceleの1症例と本邦報告例48例の集計を報告した.症例は59歳の女性で心窩部痛を主訴として来院した.入院時の検査所見より胆管炎が疑われたため手術を施行したところ,術中造影でcholedochoceleであることが判明した.嚢胞は直径約1.5 cmで内部には約8 mm大のビリルビンカルシュゥム石を認め,Scholzの分類ではType Bに相当するものであった.しかし胆嚢,肝内胆管,総胆管内には結石はみられなかった.本邦報告例48例の集計では嚢腫内のみに結石がみられたのは自験例を含めて3例だけであり,きわめてまれな病態と考えられる.一方,病理組織学的検査では裏腫壁は十二指腸粘膜からなり,軽度の炎症が認められた.自験例の治療では嚢腫壁切開が行われたが,choledochoceleは他の総胆管拡張症と違い,嚢腫壁の癌化率がきわめて低いことからその治療は嚢腫壁の切開で十分と考えられる.
索引用語
choledochal cyst, choledochocele
日消外会誌 23: 2279-2283, 1990
別刷請求先
小熊 信 〒985 塩釜市錦町16-5 坂総合病院
受理年月日
1990年5月9日
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