症例報告
貯留嚢胞壁を構成する膵尾部癌の1例
田中 信孝, 登 政和, 針原 康, 進藤 俊哉1), 浅田 学2), 鈴木 良夫, 斉木 茂樹3)
旭中央病院外科1), 同 内科2), 聖路加国際病院病理3)
71歳女性で,膵尾に膵管と交通がなく乳頭状隆起を有する膵嚢胞を認め,その穿刺細胞診でClass 5を得,更に超音波内視鏡により明瞭に嚢胞に接して頭側に存在する膵腫瘍を描出しえたことより,膵嚢胞腺癌ないし嚢胞を合併せる膵尾部癌の診断のもと膵体尾部・脾合併切除施行した1例を報告した.病理学的検討により膵尾部腫瘍は乳頭管状腺癌からなる膵管癌であり,嚢胞は貯留嚢胞で腫瘍が嚢胞壁の一部を構成していることが認められた.部分的ではあるが膵腫瘍自体が随伴せる貯留嚢胞壁を構成していることはまれであり,このような場合膵嚢胞腺癌との鑑別に注意を要するものと考えられた.
索引用語
pancreas tail carcinoma, retention cyst, cystadenocarcinoma of the pancreas
日消外会誌 23: 2284-2288, 1990
別刷請求先
田中 信孝 〒289-25 旭市イ1326 旭中央病院外科
受理年月日
1990年5月9日
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