症例報告
血液悪性疾患に合併した出血性多発性腸潰瘍の2例
今村 祐司, 横山 隆*, 津村 裕昭, 村上 義昭, 瀬分 均, 桧山 英三*, 藤本 三喜夫, 竹末 芳生, 児玉 節, 松浦 雄一郎
広島大学第1外科, *同 総合診療部
最近われわれは血液悪性疾患に合併した腸管の出血性多発性潰瘍2例を経験し,病理学的にも興味ある組織像を示したので報告する.症例1は悪性リンパ腫の白血病化に対し化学療法を施行した後に,症例2は骨髄異形成症候群のステロイド療法中に発症した.いずれも持続する大量下血のため,積極的な外科切除を行ったが,2例とも再発,増悪をきたし予後不良であった.病理組織学的検索にて症例1では小腸への悪性細胞浸潤に加えてcytomegalovirus感染が潰瘍病変部に強く認められた.症例2では非特異的潰瘍の像を呈しており,また手術侵襲に対する生体防御反応の1つである好中球機能の亢進は認められず,術後重篤な感染症を合併した.本2例から本症の発生およびその進行には一般にいわれる悪性細胞の腸管への浸潤によるのみでなく,原疾患の進行や化学療法,ステロイド剤投与などの医原性因子から生じる宿主の感染防御能の低下が大きな要因となるものと考えられた.
索引用語
hematopoietic malignancy, hemorrhagic multiple ulcers of the intestine, cytomegalovirus
日消外会誌 23: 2294-2298, 1990
別刷請求先
今村 祐司 〒734 広島市南区霞1-2-3 広島大学医学部第1外科
受理年月日
1990年5月9日
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