症例報告
左側結腸の広範なvascular ectasiaの1例
三浦 誠司, 根本 明久, 青木 久恭, 里井 豊, 網野 賢次郎, 武田 義次, 三重野 寛治, 四方 淳一
帝京大学第1外科
症例は52歳,女性,暗赤色の下血を主訴として入院した.過去に2回,同様の下血の既往がある.大腸内視鏡検査で下行結腸の小びらんからの出血が直視下に観察され,S状結腸にも数個の憩室を認めたが出血はなかった.注腸では下行結腸に縦走瘢痕がみられた.生検結果はvascular leiomyomaであったため,下腸間膜動脈撮影と腹部CT検査を行ったが腫瘍や血管性病変は見いだされなかった.下血を繰り返していること,および生検で平滑筋腫瘍が疑われたことから,下行・S状結腸切除術を行った.切除標本の粘膜下には拡張しコイル様変形を示す血管が増生し,同時に粘膜下層の膠原線維の増生を伴っていた.これらの変化は標本の全長にわたって見られた.結腸のvascular ectasiaは通常は右側大腸の限局性病変であるが,多発例や左側大腸の例も報告されている.Baumらは本症を加齢による病変で虚血が関与しているとの説をたてており,本邦でも本症の増加が考えられる.
索引用語
arteriovenous malformation, colon
日消外会誌 23: 2308-2312, 1990
別刷請求先
三浦 誠司 〒173 板橋区加賀2-11-1 帝京大学医学部第1外科
受理年月日
1990年5月9日
 |
PDFを閲覧するためにはAdobe Readerが必要です |
|