原著
胃癌の進行程度の判定における術前の選択的腹腔動脈・上腸間膜動脈造影法の有用性に関する検討
齊藤 英夫
慶應義塾大学医学部外科学教室(指導:阿部令彦教授)
胃癌380例の術前の腹腔動脈・上腸間膜動脈造影像を解析し,手術時肉眼所見および病理組織学的所見と比較して腹膜播種性転移,肝転移,リンパ節転移,漿膜浸潤の各因子について一致率(対肉眼診断),正診率(対組織診断),偽陽性率,偽陰性率を求めた.腹膜播種性転移の有無に関する全体の一致率は93.4%で,肝転移のそれは96.3%であったが,H116.7%,H266.7%と比較的小さな肝転移の診断能が不良であった.リンパ節転移の有無に関する全症例における正診率は51.4%で,偽陰性率が47.8%と高かった.リンパ節転移は濃染像から診断する場合が多く,リンパ節濃染像は組織型が高分化の症例で高頻度にみられた.漿膜浸潤の有無に関する全体の正診率は81.6%で,血管像より膵浸潤をはじめとするS343例を診断できた.血管造影法は胃癌の進行程度に診断するうえで有用な手段と考えられ,とくに腹膜播種性転移,肝転移,膵浸潤によるS3の判定に有効であった.
索引用語
stage of gastric cancer, angiography, preoperative diagnosis of the gastric cancer
日消外会誌 23: 2328-2338, 1990
別刷請求先
齊藤 英夫 〒300 土浦市下高津2-7-14 国立霞ケ浦病院外科
受理年月日
1990年6月13日
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