症例報告
十二指腸に逸脱した胃腺腫内癌の1例
石川 博文, 渡辺 明彦, 奥村 徹, 澤田 秀智, 中谷 勝紀, 中野 博重, 丸山 博司*, 堤 雅弘*, 小西 陽一*
奈良県立医科大学第1外科, *同 付属がんセンター腫瘍病理
症例は50歳,男性で全身倦怠感,嘔気およびタール便がみられた.胃X線検査では十二指腸球部に逸脱した結節状の有茎性腫瘤で,内視鏡では胃幽門洞部前,後壁に有茎性腫瘤を認め,後壁のものは十二指腸に一部逸脱していた.生検の病理組織診断では両者ともtubular adenomaであったが一部に核の異型が認められ,Group IVであった.以上より胃腺腫内癌の診断のもとに幽門側胃切除術を施行した.腫瘤は2個存在し,後壁には12.5×3.5×2.5 cm大の表面結節状の帯状の有茎性腫瘤を,前壁には2.5×1.5×2.5 cm大の有茎性腫瘤を認めた.組織学的には腫瘍の大部分はpapillotubular adenomaであったが,その中にadenomaからの癌化と考えられるadenocarcinomaが多発し,その深達度は,粘膜下層まで浸潤した像が認められた.以上,十二指腸に逸脱した胃腺腫内癌について若干の文献的考察を加えて報告する.
索引用語
adenoma of the stomach, carcinoma in adenoma of the stomach, tumor prolapsing into the duodenal bulb
日消外会誌 23: 2390-2394, 1990
別刷請求先
石川 博文 〒634 橿原市四条町840 奈良県立医科大学第1外科
受理年月日
1990年6月13日
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