症例報告
特異な発育形態を示した胆管細胞癌の2例
中原 英樹, 黒田 義則, 小島 康知, 先本 秀人, 伊藤 敬, 小川 喜輝
尾道総合病院外科
胆管癌の発生に関しては不明な点が多い.今回,珍しい発育形態を示した2例の胆管癌を経験したので報告する.
症例1は73歳男性,黄胆で発症しpercutaneous transhepatic cholangiography(PTC)において肝門部肝管の閉塞所見を認め,手術の結果,肝管内に有茎性に増殖した2個の胆管癌を認めた.症例2は69歳男性,発熱・下腹部痛で発症した.PTCでは拡張した左肝管と,その内部に不均一な陰影欠損を認めた.吸引にては水アメ様粘液様物質を認めた.手術の結果,肝内胆管上皮に,ムチン産生を伴う腫瘍細胞を認めた.今回の症例1では,腫瘍の茎に癌浸潤を認めず,いわゆるcarcinoma in adenomaの発育形態であった.症例2では,腫瘍細胞外にムチンを分泌するmucinous typeの乳頭状腺癌であった.
この2症例は,異なった腫瘍の増殖形態を示しており,発癌のメカニズムを考える上で,非常に興味ある症例であった.
索引用語
cholangiocarcinoma, mucin producing tumor, carcinoma in adenoma of biliary tract
日消外会誌 23: 2410-2414, 1990
別刷請求先
中原 英樹 〒722 尾道市古浜町7-19 尾道総合病院外科
受理年月日
1990年6月13日
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