症例報告
仮性嚢胞を併存した成人腸間膜真性嚢腫の1例
赤松 大樹, 中島 邦也, 松田 康雄, 藤川 正博, 位藤 俊一, 久米 庸一, 伊豆蔵 豊大
大手前病院外科
腸間膜嚢腫はまれな疾患である.急性腹症を呈した成人女性の腸間膜嚢腫の1例を報告した.患者は21歳の女性.下腹部痛および腹部膨満を訴えて卵巣嚢腫の疑いにて入院したが,入院後1週間目に突然下腹部痛,腹部膨満が増強し緊急手術が行われた.嚢腫は横行結腸間膜原発で横行結腸に強く癒着していたため,横行結腸を部分切除し端々吻合した.切除標本では嚢腫は肉眼的に2つの部分に分かれていたが,組織学的にも幼弱な腸管上皮を有するenteric cystと上皮を持たないpseudocystでその発生は異なっていた.
腸間膜嚢腫はその頻度の低さ,特異的な臨床症状を欠くことより術前診断は困難であり,特に卵巣,腎・尿路系,肝臓,膵臓などの嚢腫との鑑別が問題となる.治療は外科的に嚢腫を摘出すればよいが,隣接する腸管との剥離が困難で腸管切除が必要となる場合もある.
索引用語
mesenteric cyst, enteric cyst, pseudocyst
日消外会誌 23: 2429-2432, 1990
別刷請求先
赤松 大樹 〒659 芦屋市朝日ケ丘町39-1 市立芦屋病院外科
受理年月日
1990年6月13日
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