特集
肝細胞癌の内科的治療
谷川 久一
久留米大学医学部第2内科
肝細胞癌(HCC)の多くは肝硬変を合併しているゆえ,外科的切除適応症例は限られている.私どもは3 cm以下の結節性HCCに対して,肝機能がよく保たれ(Child A),表在性で単発のものを外科切除に,それ以外のものをエタノール局注療法(PEIT)としている.私どもはこのような症例160に対して,124例(単発40.3%)に対してPEITを,36例(単発91.7%)に外科的切除を行い,全体として48%の5年生存率(Kaplan-Meier)を保っている.PEITと外科切除間に有意差はみられていない.PEITのうち,Child Aで2 cm以下の症例の5年生存は85%,1.5 cm以下のEdmondson分類でIあるいはI~IIの症例は95%と予後は極めて良好である.したがってPEITの予後を左右するものは,腫瘍径のみならず,組織異型度,肝硬変重症度などであることが明らかとなった.
索引用語
hepatocellular carcinoma, percutaneous ethanol injection therapy, indication criteria of therapy for small hepatocellular carcinoma
日消外会誌 23: 2492-2496, 1990
別刷請求先
谷川 久一 〒830 久留米市旭町67 久留米大学医学部第2内科
受理年月日
1990年4月12日
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