特集
肝細胞性肝癌の治療における外科の役割
岡本 英三, 山中 若樹, 藤元 治朗
兵庫医科大学第1外科
1973年より1989年末までに教室で経験した肝細胞癌外科治療例589例(内肝切除例408例)を対象に肝癌治療における切除を軸とした集学的治療の役割につき検討を加えた.治癒切除例の5生率は60%,非治癒切除は6%,また肝動脈結紮例のそれは9%であったことから,外科は第一に治癒切除を目的にしなければならない.とくにVp(-),IM(-),5 cm以下,TW(-)の5生率は91%であることからこれらの条件がそろえば切除の絶対適応となる.また,Vp,IM因子についで切除予後に影響を及ぼすのは腫瘍のDNA ploidy patternであり,これがdiploid型であれば進行肝癌で非治癒切除(減量手術)に終わっても良好な予後を示すことが判明した.したがって進行肝癌では術前の腫瘍生検材料から測定したDNA ploidyを参考に切除適応の決定が可能である.つまり治癒期待度とDNA ploidyが外科の役割を左右する重要な因子である.
索引用語
hepatocellular carcinoma, hepatic resection, nuclear DNA content
日消外会誌 23: 2497-2501, 1990
別刷請求先
岡本 英三 〒663 西宮市武庫川町1-1 兵庫医科大学第1外科
受理年月日
1990年5月8日
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