原著
化学療法を併用した直腸癌術前照射療法―局所再発に対する効果―
更科 広実, 井上 育夫, 斉藤 典男, 布村 正夫, 横山 正之, 中山 肇, 奥井 勝二, 轟 健*, 折居 和雄*, 岩崎 洋治*
千葉大学医学部第1外科, *筑波大学臨床医学系外科
化学療法を併用した直腸癌術前照射療法(42.6 Gy)が,術後の局所再発防止にどのような効果を与えているかを知るため,非照射群37例と照射群44例を臨床病理学的に検討した.局所再発(術後観察期間平均3年10か月)は非照射群7例18.9%,照射群2例4.5%であった.局所再発因子の組織学的検討では,照射群は非照射群に比べ壁深達度a2症例の低値,ew(外科的剥離端までの距離)2 mm未満症例の低値,およびリンパ節転移n2以上の症例の低値がみられ,両群間に有意差が認められた.さらに照射群のa2症例,ew 2 mm未満症例からの局所再発は,非照射群に比べ明らかに低下していた.これに対し照射群におけるn2以上の症例からは,非照射群と同様に高い再発率が認められた.以上の結果,術前照射療法による局所再発の低下は,壁深達度やewに起因した再発の減少によるところが大きく,一方リンパ節転移陽性の症例では照射群といえど厳重な経過観察が必要と考えられた.
索引用語
local recurrence of rectal cancer, preoperative radiation therapy, chemotherapy
日消外会誌 23: 2598-2603, 1990
別刷請求先
更科 広実 〒280 千葉市亥鼻1-8-1 千葉大学医学部第1外科
受理年月日
1990年7月10日
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