症例報告
中部食道潰瘍の1症例
笠原 宏, 浜辺 豊, 加藤 道男, 大柳 治正, 斉藤 洋一, 杉原 俊一*, 井上 和則*, 藤盛 孝博**
神戸大学第1外科, *済生会中津病院外科, **神戸大学第2病理
近年,診断技術の進歩とともに食道炎および食道潰瘍に遭遇し治療する機会が多くなってきた.しかし,中部食道潰瘍の報告はまれである.われわれは,この原因不明の中部食道潰瘍の1例を経験したので報告する.
症例は56歳の男性で,発熱と胸骨後部痛にて来院した.特別な化学物質や薬物の服用の既往はなかった.食道造影X線検査および食道内視鏡にて,切歯列より26 cmからの中部食道に大きな全周性の潰瘍を認めたが,内視鏡による鉗子生検では悪性所見を認めなかった.制酸剤および中心静脈栄養などにて保存的治療を施行していたが,突然大量吐血し,緊急手術として胸部食道全摘術が行われた.摘出標本では,潰瘍は食道上部2/3に存在し凝血塊の付着を認めた.口側および肛門側の潰瘍辺縁は明瞭であった.食道下部および胃には,潰瘍および腫瘤を認めなかった.病理組織学的には活動性の慢性潰瘍の所見であった.
索引用語
middle intra-thoracic esophageal ulcer, nonspecific esophageal ulcer
日消外会誌 23: 2610-2613, 1990
別刷請求先
笠原 宏 〒650 神戸市中央区楠木町7-5-23 神戸大学医学部第1外科
受理年月日
1990年6月13日
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