食道癌手術侵襲に対するUlinastatinの効果に関する検討

後藤　正幸, 島　伸吾, 米川　甫, 森崎　善久, 脇山　博之, 吉住　豊, 田中　勧

防衛医科大学校第2外科

　食道癌の手術に際して臓器保護を目的としてウリナスタチンを予防的に投与して検討した．対象は当科で切除した食道癌37例について無作為にコントロール群，ウリナスタチン群に分け，ウリナスタチン群には術直前10万単位，術直後20万単位，以後1日30万単位を4日間投与し，1．類粒球エラスターゼ，2．末梢白血球数，3．血清過酸化脂質，4．フィブロネクチン，5．補体，6．肝機能，7．腎機能，8．呼吸機能について経日的に観察した．両群間で術後1日目の尿量（p＜005）と呼吸指数（p＜0.01）で有意差を認めたが，顆粒球エラスターゼ，フィブロネクチン，過酸化脂質，補体，肝機能では有意差は認められなかった．食道癌手術の侵襲では白血球を介した過剰な生体防御反応は起きず，ウリナスタチンは蛋白融解酵素阻害作用以外の機序で術後早期の尿量増加と呼吸機能改善作用のある可能性が示唆された．

索引用語
the surgical stress of esophageal cancer, Ulinastatin, granulocyte elastase, organ protection

別刷請求先
後藤　正幸　〒359　所沢市並木3-2　防衛医科大学校第2外科

受理年月日
1990年7月10日

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