外傷性消化器破裂に対する腹腔鏡診断の意義

中川　隆雄, 鈴木　忠, 石川　雅健, 中島　清隆, 薗田　裕, 横山　利光, 堀江　良彰, 宮崎　舜賢, 浜野　恭一

東京女子医科大学救命救急センター第2外科

　外傷性消化器破裂の診断に際し，実質臓器破裂は各種画像診断法でほぼ正確に診断が得られるようになったが，管腔臓器破裂は，腹腔内遊離ガスを認めない場合，決め手になる診断法を欠くのが現状である．教室では，最近7年4か月間に380例の腹部外傷を経験したが，このうち管腔臓器破裂が疑われた22例に針状腹腔鏡（外径2 mmと外径3.4 mmの2機種）を施行したところ，腹腔内臓器損傷の存在を21例に確認し，うち12例は損傷部位を直接観察することができた．腹腔鏡所見から緊急手術例を決定した症例は，管腔臓器破裂3例と進行性腹腔内出血2例の計5例である．他の17例は，いずれも腹腔鏡所見から管腔臓器破裂はなく保存的治療が可能と判断し，すべて保存的に軽快した．医原性損傷の3例は，腹腔鏡所見から無用の開腹を避けることができた．以上の臨床成績から，腹腔鏡は，外傷性消化器破裂の診断および手術適応の決定に極めて有用と考えられた．

索引用語
emergency laparoscopy, ultrafine laparoscope, abdominal trauma, gastrointestinal tract injury, iatrogenic intraabdominal injury

別刷請求先
中川　隆雄　〒162　新宿区河田町8-1　東京女子医科大学救命救急センター第2外科

受理年月日
1990年10月11日

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