会長講演
肝臓外科の変遷・問題点―肝細胞癌を中心として―
森岡 恭彦
東京大学第1外科学教室
わが国において肝切除術対象の主要部分を占める疾患は肝細胞癌であるが,その切除成績は必ずしも芳しいものとはいえない.その原因を検討し成績を向上させるため,東京大学第1外科学教室における肝細胞癌切除症例193例を分析した.なお135例に肝区域切除以下のいわゆる小範囲肝切除を,58例に葉切除以上の広範囲切除を施行した.
肝細胞癌で1981年6月以降に切除された症例では1981年5月以前に切除された症例と比較し,出血量が有意に少量であり,手術死亡も少い.また,その遠隔成績も良好であり,5年生存率は37.9%である.これは手術器械の開発,画像診断法の進歩,肝区域についての解剖学的知見,術後の肝不全や呼吸不全などの重篤な合併症の病態の把握,対策法の研究,手術限界判定法の進歩などによりもたらされたものである.しかし,肝細胞癌ではいまだに再発症例も多く,その再発予防法の開発が望まれる.再発に対して再切除が有効であり,積極的に再切除すべきと考える.
索引用語
hepatocellular carcinoma, hepatic resection, liver failure, liver cirrhosis, recurrence of tumor
別刷請求先
森岡 恭彦 〒113 文京区本郷7-3-1 東京大学医学部第1外科
受理年月日
1990年12月12日
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