原著
選択的近位迷走神経切離術兼幽門洞粘膜切除術における幽門洞粘膜温存範囲に関する実験的検討
榊原 敬
順天堂大学医学部外科学教室(外科学第1)(主任:榊原 宣教授)
選択的近位迷走神経切離術兼幽門洞粘膜切除術(selective proximal vagotomy with mucosal antrectomy:SPV+MA)は,幽門輪近くで吻合を行うと胃内容排出能障害がみられる.これを予防するには,幽門洞粘膜をできるだけ温存すればよい.一方,温存範囲を広くすれば,十分な減酸が得られない.そこで,幽門洞粘膜温存範囲と減酸との関係をみるために,イヌを用いて幽門洞粘膜の温存範囲を幽門輸より1 cm,2 cmおよび3 cm温存の3群に分け,術前,MA後およびSPV+MA後に胃内外分泌機能検査および胃排出能検査を行い,比較検討した.
SPV+MAにおいて,3 cm温存群で術後高gastrin血症が見られたが,MA0 46.6%,IA0 90.0%と十分な減酸が得られた.また胃排出能検査において,液体および固体の胃排出能は満足すべきものであった.したがって,幽門輪よりできるだけ遠位で吻合を行うという見地より,幽門洞粘膜温存範囲は幽門輪より3 cmまで温存することが可能であると考えられる.
索引用語
selective proximal vagotomy with mucosal antrectomy, duodenal ulcer surgery, gastric endo-exocrine function, the extent of antral mucosal preservation
別刷請求先
榊原 敬 〒113 東京都文京区本郷2-1-1 順天堂大学医学部第1外科
受理年月日
1990年10月11日
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