症例報告
早期胃癌を併存した左胃動脈瘤破裂の1例
嘉悦 勉, 新井 一成, 原田 高志, 丸岡 義史, 鈴木 恵史, 石井 博, 加藤 貞明, 河村 正敏, 小池 正, 鹿間 祐介*, 松村 堅二*
昭和大学外科, 同 第1内科*
症例は70歳男性.言語・構音障害を主訴に当院入院.左側頭葉に血腫を認め,保存的治療を行っていたが,突然,出血性ショックに陥り,厳重な全身管理下に出血源精査を行った.上部消化管内視鏡検査では胃体上部にIIc型早期胃癌を認めたが,出血源とは断定できず,腹部超音波検査および腹部computed tomography検査を行った.肝下面を中心とする腹腔内血腫が認められ,腹部血管造影検査を行い左胃動脈瘤の存在を認めたため,早期胃癌を併存した左胃動脈瘤破裂と診断し,胃全摘術を施行して救命しえた.本症は,調べえた本邦報告例では10例とまれであり,かつ破裂例は6例のみであった.画像診断,全身管理の進歩により,近年予後の改善をみているが,いまだ診断に難渋している症例が多かった.原因不明の腹痛,急激なショックを呈した症例に遭遇した際には本症も念頭に置くべきと思われた.
索引用語
aneurysm of gastric artery, ruptured aneurysm, early gastric cancer
別刷請求先
嘉悦 勉 〒142 品川区旗の台1-5-8 昭和大学外科
受理年月日
1990年10月11日
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