症例報告
体外循環下肝持続灌流冷却により切除した下大静脈腫瘍栓合併肝細胞癌の1例
奥田 康司, 安藤 和三郎, 牟田 幹久, 谷脇 智, 馬田 裕二, 安永 弘, 名嘉真 透, 浦口 憲一郎, 押領司 篤茂, 才津 秀樹, 小須賀 健一, 中山 和道, 大石 喜六
久留米大学医学部第2外科
下大静脈腫瘍栓合併肝細胞癌の切除を経験した.腫瘍栓は右肝静脈より胸腔内下大静脈右房直下に達し,肝授動,肝切除操作により腫瘍栓遊離による肺梗塞を起こす危険性が感じられたため,バイオポンプを用い体外循環下に肝ならびに下大静脈のcomplete vascular exclusionを施行した後,肝切除および下大静脈部分切除,腫瘍栓摘出術を行った.この際,長時間の肝阻血に対し門脈より4℃乳酸加リンゲル液にて肝を持続灌流冷却した.肝阻血時間は70分であったが再灌流後の肝の色調は赤紫色均一で,術後GOTおよびTBの最高値はそれぞれ187K.U.,2.6 mg/dlであり肝は良好に温存されていた.また現在術後15か月であるが再発微候はなく元気に社会復帰しており,高度脈管浸潤を伴う肝細胞癌切除療法として同法の有用性が示唆された.
索引用語
hepatocellular carcinoma, caval tumor thrombus, hepatectomy on the in situ perfused liver
別刷請求先
奥田 康司 〒830 久留米市旭町67 久留米大学医学部第2外科
受理年月日
1990年11月19日
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