症例報告
転移巣にも石灰化をともなった粘液産生膵癌の1例
湯浅 典博, 堀 雅晴, 三尾 泰司, 関 誠, 高木 國夫, 西 満正, 加藤 洋*
癌研究会付属病院外科, 同 病理部*
主病巣,肝転移巣に石灰化をともなった粘液産生膵癌の1例を報告した.症例は75歳女性.腹部単純X線写真にて左上腹部に石灰化の集簇を認め,腹部超音波検査,腹部computed tomographyにて石灰化をともなった膵尾部の腫瘤と肝右葉の腫瘤を認めた.膵管像では主膵管の拡張と陰影欠損を認め癌研ERCP分類III型であった.粘液産生膵癌,肝転移,横行結腸浸潤と診断し,膵体尾部脾切除,横行結腸合併切除を施行した.腫瘍は病理組織学的に粘液癌mucinous adenocarcinomaと診断された.石灰化巣は腫瘍内に存在し,その成因としてdystrophic calcificationが考えられた.
石灰化(膵石)をともなった粘液産生膵腫瘍の報告例は本症例を含めて6例で,粘液産生膵腫瘍における石灰化の成因について考察を加えた.
索引用語
mucin producing cancer of the pancreas, pancreatolithiasis, mucinous adenocarcinoma of the pancreas
別刷請求先
湯浅 典博 〒466 名古屋市昭和区鶴舞町65 名古屋大学医学部第1外科
受理年月日
1990年10月11日
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