症例報告
同胞3例に多発大腸癌の発生をみたcancer family syndromeの1家系
固武 健二郎, 小山 靖夫, 池田 正, 清水 秀昭, 菱沼 正一, 稲田 高男, 尾澤 巌, 尾形 佳郎
栃木県立がんセンター外科
同胞3名が若年性に発症した多発性大腸癌症例を経験した.本家系ではさらに3名の血縁者に癌の発症が確認されており,Lynchらの提唱するcancer family syndrome(以下CFSとする)に合致する家系であると考えられた.
本家系では祖父が直腸癌,母親が悪性リンパ腫,多発大腸癌,子宮内膜癌,その妹が子宮癌に罹患してそれぞれ癌死している.第3世代では,現在までに長女に多発大腸癌,子宮内膜癌,卵巣癌,長男と次女に多発大腸癌が確認され,この3名に大腸癌14病変,子宮内膜癌と卵巣癌が各1病変認められている.
CFSの本邦報告例18家系について検討した.74名の大腸癌患者の男女比は1:0.9,発症年齢は40歳代が最多で,右側結腸癌の頻度が比較的高かった.多発大腸癌は28%(21/74),重複癌は19%(14/74)にみられた.他臓器癌では,診断基準に含まれている子宮内膜癌を除けば,胃癌の合併頻度が高かった.
索引用語
cancer family syndrome, hereditary colorectal cancer
別刷請求先
固武健二郎 〒320 宇都宮市陽南4-9-13 栃木県立がんセンター外科
受理年月日
1990年11月19日
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