症例報告
肝転移巣にalpha-fetoprotein陽性細胞を認めた多発進行胃癌の1切除例
露木 茂, 仁尾 義則, 井上 一知, 戸部 隆吉
京都大学医学部第1外科
胃の同時性多発進行癌でおのおのが別々の組織型を示し,かつ片方の肝転移巣がalphafetoprotein(AFP)産生型腫瘍であった症例を報告する.症例は76歳男性で,上腹部痛,右季肋部痛を主訴に来院した.胃透視,内視鏡検査にて,噴門部にBorrmann I型病変を,胃角上部にBorrmann II型病変を認め,computed tomography(CT)にて肝S4領域に転移を認めた.腫瘍マーカーでは,carcinoembryonic antigen(CEA)は正常範囲内であったが,AFPが283 ng/mlと高値であった.手術所見は,H1,P0,S1,N1で胃全摘術およびR2郭清,Roux-en Y法による再建と肝S4区域切除術を施行した.病理所見では,噴門部腫瘍は未分化癌類似のリンパ球,形質細胞浸潤の著明な低分化型腺癌で,胃角部腫瘍は中分化型腺癌であり,多発胃癌と考えられた.肝転移巣は胃角部腫瘍と同様の中分化型腺癌であり,PAP法によりAFP陽性細胞が検出されたが,原発巣,リンパ節転移巣では検出されなかった.
索引用語
alpha-fetoprotein, mutiple gastric cancer
日消外会誌 24: 1042-1046, 1991
別刷請求先
露木 茂 〒606 京都市左京区聖護院川原町54 京都大学医学部第1外科
受理年月日
1990年12月12日
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