症例報告
総腸間膜症を合併した隆起型癌による成人S状結腸重積症の1例
長見 晴彦, 田村 勝洋*, 中瀬 明*
第二出雲市民病院外科, *島根医科大学第1外科
今回,私たちは74歳女性で総腸間膜症を合併した隆起型癌による成人S状結腸重積症の1例を経験した.入院時の注腸検査ではS状結腸重積症を認めたが,まずは保存的治療を行った.入院後4日目の注腸検査では腸重積は解除されていたが,S状結腸に約3 cmの隆起性病変と同部の狭窄を認めたため,S状結腸癌の診断のもとにS状結腸切除を行った(H0,P0,N(-),S0,R2).また自験例では手術時に総腸間膜症の存在も確認した.切除標本肉眼像ではS状結腸に2.8 cm×2.8 cm大の腫瘤型(1型)腫瘍とその周囲に腸重積症の結果による潰瘍(3 cm ×4 cm大)と3個の小隆起性病変(3 mm×4 mm大)を認めた.自験例の腸重積症発生機序としてはS状結腸癌(1型,深達度pm)によってS状結腸が限局性痙攣をきたし,さらに総腸間膜症を合併していたため結腸全体が移動性に富んでいた結果,限局性痙攣をきたした腸管が拡張腸管に容易に嵌入したためと考えられた.
索引用語
cancer of the sigmoid colon, intussusception in adult, mesenterium ileocecal communei
日消外会誌 24: 1086-1090, 1991
別刷請求先
長見 晴彦 〒693 出雲市知井宮町238 第二出雲市民病院外科
受理年月日
1990年11月19日
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