特集
消化器癌転移におけるplasminogen activatorの役割
西野 暢彦, 中村 昌樹, 青木 克憲, 今野 弘之, 馬場 正三, 高田 明和*
浜松医科大学第2外科, *同 第2生理
癌細胞由来のplasminogen activator(以下PA)が消化器癌の浸潤,転移にどのように関わっているかを検討した.免疫組織染色で胃癌の先進部や脈管侵襲部でurokinase(以下UK)が強く染色された.胃癌および転移リンパ節でUK値がそれぞれの健常組織に対して有意に増加していた(胃癌原発巣:10.59±10.61 unit/g vs 1.03±0.72 n=17 p<0.01,リンパ節:5.08±1.72 vs 1.39±0.50 n=9p<0.05).腹膜組織のUK値は腹膜因子P0でも主病巣の深達度がse以上では高値を示し,逆にtissue-PA(以下t-PA)値は低値を示した.胃癌原発巣組織中のplasminogen activator inhibitor-I(以下PAI-I)値が高い症例ではリンパ節転移例が高い傾向を示した.食道,胃,大腸癌患者の血漿中t-PA値はcontrolに対して低下していた.
癌組織局所でのUKの活性化,全身臓器でのt-PAの低下など,PAが癌の浸潤や転移に深く関わることが示唆された.
索引用語
cancer of digest organs, plasminogen activator, metastasis
日消外会誌 24: 1096-1100, 1991
別刷請求先
西野 暢彦 〒431-31 浜松市半田町3600 浜松医科大学第2外科
受理年月日
1990年12月12日
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