特集
消化器癌転移病変の特性
谷川 允彦, 下松谷 匠, 高橋 康嗣, 堀内 哲也, 北角 泰人, 増田 靖彦, 村岡 隆介
福井医科大学第2外科
癌の転移形成プロセスは段階を追って進む一連の事象の積み重ねであることから,その研究領域は多岐にわたるが大きく分けると癌細胞固有を対象にした検討と細胞外マトリックスの分解・生体防御反応・増殖因子などを含めた癌の微小環境を検討対象としたものに二分できる.本研究は前者に位置づけられるもので,胃癌・大腸癌の原発・転移巣別に制癌剤感受性,In vitro増殖能,DNA ploidy,In vivo増殖能(Tpot)を指標に転移巣を構成する腫瘍細胞の特性を検討して以下の結論を得た.(1)原発巣をモザイクに構成する細胞群の一部の,中でも増殖活性の高い細胞群(多くはaneuploid)が転移巣形成に関係する.(2)転移形成の早期はことに増殖能が高く,制癌剤感受性も高い傾向にある.したがって手術療法後の微小転移巣に対する感受性薬剤による積極的・強力な化学療法の意義は大きいものと考えられる.
索引用語
tumor heterogeneity, chemosensitivity, tumor growth potential
日消外会誌 24: 1101-1106, 1991
別刷請求先
谷川 允彦 〒910-11 福井県吉田郡松岡町下合月23 福井医科大学第2外科
受理年月日
1990年11月19日
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