原著
大腸癌肝転移の臨床病理学的検討
高橋 直典, 柿崎 健二, 菊地 秀, 山内 英生, 国井 康男
国立仙台病院外科
1976年から1985年の間に切除した大腸癌404例について,背景因子および臨床病理学的因子と肝転移との関係を調べ,肝転移再発の予知およびその抑制の可能性について検討した.背景因子の解析では,肝転移陰性群(C群)と異時性肝転移群(A群)の間に有意差はなかった.病理学的にはDukes A,stage Iの症例から異時性肝転移の発生は認められなかった.静脈侵襲は同時性肝転移群(B群)で87.5%と高率にみられたが,A群で16%,C群8.9%であった.リンパ節転移はA群で76%,B群58.5%,C群49.1%であった.リンパ管侵襲はC群57.2%に対し,A群80%,B群85.4%と肝転移群が高率を示した.したがって,異時性肝転移の危険因子には静脈侵襲と同様,リンパ節転移,リンパ管侵襲も関与することが示唆された.危険因子群を中心とした血清carcinoembryonic antigen値と画像による十分な経過観察は,肝切除や肝動注による治療の機会を拡大すると考えられた.
索引用語
colorectal cancer, risk factor of liver metastasis, adjuvant chemotherapy for colorectal cancer
日消外会誌 24: 1236-1241, 1991
別刷請求先
高橋 直典 〒983 仙台市宮城野区宮城野2-8-8 国立仙台病院外科
受理年月日
1991年1月16日
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