症例報告
Interleukin 2腹腔内投与により急性増悪をきたした癌性腹膜炎の1例とその機構の考察
大西 博昭, 奥野 清隆, 中村 哲彦, 白山 泰明, 尾崎 公俊, 安富 正幸
近畿大学第1外科
進行胃癌により癌性腹膜炎をきたした症例で,interleukin-2(IL-2,8×105JRU,週2回)の間欠的腹腔内投与法を施行したところ,明らかな免疫能の低下と臨床症状の増悪,腫瘤の増大をきたした1症例を経験した.本症例は入院時(未治療時)の腹腔内浸出細胞peritoneal exudate cell(PEC)に強いlymphokine activated killer(LAK)活性が検出されていたが,IL-2投与によりLAK活性は有意に低下し,腹水中のprostaglandin E2(PGE2)濃度は著明に上昇した.PECの細胞亜分画はモノサイト/マクロファージが多数を占めCD3陽性分画,CD16陽性分画の減少をみた.本症例は,このような著明な免疫機能の低下とともに腹部腫瘤の増大,腹水増加をきたしIL-2投与後25日目に不幸な転帰をとった.
IL-2による腫瘤の急速な増大,臨床症状の増悪の機構を検討するとともに癌性腹膜炎に対するIL-2投与の適用について考察を加えた.
索引用語
peritonitis carcinomatosa, interleukin-2, intraperitoneal administration
日消外会誌 24: 1282-1284, 1991
別刷請求先
大西 博昭 〒589 大阪狭山市大野東377-2 近畿大学医学部第1外科
受理年月日
1990年12月12日
|
PDFを閲覧するためにはAdobe Readerが必要です |
|