症例報告
膵嚢胞腺癌と診断し術後肝蛭の膵内寄生と判明した1例
藤田 彰一, 別府 真琴, 白 鴻成, 藤本 憲一, 平井 健清, 村井 紳浩, 谷口 積三, 松村 武男1)
県立西宮病院外科, 神戸大学医学部医動物学教室教授1)
膵管造影にて膵嚢胞腺癌と診断し,切除標本の組織学的診断により肝蛭症と判明した1症例を経験したので報告する.症例は72歳男性.主訴は頑固な上腹部痛.腹部computed tomography検査で,膵体部にlow density massを認め,内視鏡的膵管造影で多房性嚢胞を膵体部に認めたため,膵嚢胞腺癌の疑いで開腹.膵体尾部切除,胃全摘術,脾摘術を施行した.膵切除標本の症変は,好酸球を主とした炎症性肉芽腫で寄生虫の虫卵を多数認めた.虫卵の大きさと形態,そして術後5年目に肝蛭抗原の皮内反応陽性,Ouchterlony法および免疫電気泳動法によって肝蛭抗原と患者血清との間に特異的沈降帯を認めた点より,肝蛭の膵内寄生と診断した.
索引用語
fascioliasis, ectopic parasitism in the pancreas, Fasciola hepatica egg, cystadenocarcinoma of the pancreas
日消外会誌 24: 1305-1308, 1991
別刷請求先
藤田 彰一 〒662 西宮市六湛寺町13-9 兵庫県立西宮病院外科
受理年月日
1991年1月16日
|
PDFを閲覧するためにはAdobe Readerが必要です |
|