症例報告
Meckel憩室より発生した多嚢胞形成性癌の1例
高橋 貞二1), 4), 上田 忠1), 田村 豊一2), 遠藤 勝実2), 八木橋 操六3), 伊藤 卓3)
北秋中央病院外科1), 同 内科2), 弘前大学第1病理3), 秋田大学第1外科4)
Meckel憩室にみられる悪性腫瘍,特に癌腫はまれであり,欧米23例,本邦5例が報告されているに過ぎない.Meckel憩室から発生した胎児遺残組織由来と思われる癌腫の症例を報告する.症例は43歳,男性で,下腹部不快感,下腹部腫瘤を訴え入院した.人院時,左下腹部に手掌大で弾性硬の腫瘤を触知した.検査成績では,carcinoembryonic antigen 4.3 ng/ml,α-fetoprotein36 ng/mlと高値を呈した.以上の所見と画像診断より腹部悪性腫瘍の診断で手術を施行した.開腹すると回盲部より約130 cmの部位にMeckel憩室があり,その先端に手掌大の腫瘍を認め,腫瘍は結腸間膜を押し分けるように後方に発育していた.手術は腫瘍を含めてMeckel憩室を切除し,結腸の一部を合併切除した.組織では,腫瘍はMeckel憩室の筋層と連続した多嚢胞形成性のadenosquamous carcinomaでhuman vitelline structureを模倣する構造も認め,Meckel憩室から発生した胎児遺残組織由来の癌腫と考えられた.術後7か月の現在,経過は良好である.
索引用語
carcinoma of Meckel's diverticulum, adenosquamous carcinoma of the small intestine
日消外会誌 24: 1314-1318, 1991
別刷請求先
高橋 貞二 〒018-33 秋田県北秋田郡鷹巣町花園町10-5 北秋中央病院外科
受理年月日
1990年12月12日
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