原著
ファーター乳頭部腫瘍におけるcarcinoembryonic antigenおよび癌関連糖鎖抗原の免疫組織化学的検討―特に癌と腺腫との比較―
小林 匡, 恩田 昌彦, 内田 英二, 山中 洋一郎, 相本 隆幸, 笹島 耕二, 田尻 孝, 江上 格, 浅野 伍朗*, 馬杉 洋三*
日本医科大学第1外科, 同 病理学教室*
ファーター乳頭部癌16例,それに併存する腺腫組織9例および正常乳頭部組織4例におけるcarcinoembryonic antigen(CEA)および癌関連糖鎖抗原として,I型糖鎖抗原:CA50,CA19-9,II型糖鎖抗原:Sialyl Lex-i,Lex,Leyの発現を免疫組織学的に比較検討した.正常組織ではすべて陰性であり,腺腫組織,癌組織では陽性率はCEA :100%,93.8%,CA50:77.8%,81.3%と高値を示した.染色強度は癌で明らかに腺腫より強く,染色様式でも腺腫ではCEAは細胞質内核上部(7/9例)に,CA50,Lex,Leyでは腺腔側細胞膜のみ(7/9,2/9,3/9例)に陽性を示す症例が多かったのに対し,癌では腺腔側細胞膜と細胞質全体が陽性を示す症例が多く異なる結果を示した(CEA:10/16,CA50:9/16,Lex:9/16,Ley:12/16例).以上より腺腫は正常の乳頭部粘膜から腸瘍性変化をきたしたものと考えられたが,癌とは染色強度,染色様式で異なり,免疫組織化学的には正常と癌の間に位置付けられる病変と考えられた.
索引用語
carcinoma of the papilla of Vater, carcinoembryonic antigen, cancer-associated carbohydrate antigens, immunohistochemistry
日消外会誌 24: 1947-1953, 1991
別刷請求先
小林 匡 〒113 文京区千駄木1-1-5 日本医科大学第1外科
受理年月日
1991年2月13日
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