食道壁内嚢胞の1例

佐々木　明, 佐々木　薫, 村田　文一郎 , 佐々木　俊夫, 小佐々　博明^＊, 西田　哲朗^＊＊

佐々木外科病院, 山口大学第2外科^＊, 福岡大学第1病理^＊＊

　食道壁内に嚢胞が認められることはきわめてまれである．症例は53歳の男性で，検診としての上部消化管内視鏡検査で下部食道粘膜下腫瘤を発見された．食道造影，胸部X線単純写真，胸部computed tomography検査の結果縦隔腫瘍や食道平滑筋腫が考えられ開胸すると，腫瘤は食道壁内に埋もれ込むような形で存在し，食道壁内から発生したものと思われた．摘出標本は大きさ2.8×2.2×2.2 cmで粘稠な緑黄褐色の内溶液を貯留した単胞性の嚢胞であった．病理組織標本で内腔は多列円柱繊毛上皮で被われ，筋層は2層でよく発達していた．壁在神経叢および粘液腺が見られたが，軟骨は見られなかった．食道壁内に発生する気管支嚢胞と食道嚢胞は発生原基が同じである前腸原性嚢胞であるため粘膜上皮からだけでは鑑別できないが本症例は食道嚢胞に近い形態であると思われた．食道壁内嚢胞について若干の文献的考察を併せて行った．

索引用語
esophageal cyst, foregut cyst, posterior mediastinal tumor

別刷請求先
佐々木　明　〒753　山口市泉都町9-13　佐々木外科病院

受理年月日
1991年2月13日

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