症例報告
尾状葉肝細胞癌の1切除例
安井 元司, 安藤 修久, 野崎 英樹, 遠山 道正, 片岡 将, 末永 昌宏*
名鉄病院外科, 名古屋記念病院外科*
症例は57歳・女性で,肝硬変について精査中,ultrasonography(以下US)およびcomputed tomography(以下CT)にて肝尾状葉に腫瘤を指摘され入院した.血管造影にて肝細胞癌と診断された.肝機能検査ではアルブミン3.7 g/dl,総ビリルビン1.2 mg/dl,ヘパプラスチンテスト60%,K ICG 0.08 min-1,ICG R15 28.8%であり,臨床病期IIであった.画像診断上は尾状葉左側に限局しており,尾状葉切除の適応と判断した.手術は肝門部における尾上葉左側への動脈枝,門脈枝を結紮切離の後,短肝静脈を結紮切離して,超音波吸引破砕装置を用いて肝切除を終了した.術中出血量は880 mlであった.尾状葉に発生した肝細胞癌の切除例は6例と少ない.これは大部分が肝硬変を併存していることと,その解剖学的占拠部位による切除の難しさによると思われる.しかし近年尾状葉の脈管構築も明らかにされてきており,安全に切除可能であると考える.
索引用語
caudate lobe, liver cirrhosis, hepatocellular carcinoma
日消外会誌 24: 2027-2031, 1991
別刷請求先
安井 元司 〒451 名古屋市西区松前町3-45 名鉄病院外科
受理年月日
1991年2月13日
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