症例報告
術中膵管造影で広範な膵管上皮内進展を診断しえた膵癌の1切除例
柴田 佳久, 二村 雄次, 神谷 順一, 前田 正司, 岡本 勝司, 塩野谷 恵彦
名古屋大学医学部第1外科
教室では膵癌の膵内進展に応じて膵切除範囲を決定している.特に体尾部主膵管拡張を伴う膵頭部癌には,術中膵管造影の所見を下に,体尾部膵管上皮内進展の有無や範囲を診断し術式を選択している.症例は50歳男性で,全身膵怠にて近医を受診し黄疸を指摘された.腹部超音波検査と経皮経肝胆道造影で胆管拡張と膵頭部腫瘤を,内視鏡的逆行性膵管造影では膵頭部で主膵管が閉塞し膵内胆管も狭窄していた.腹部断層写真で膵頭部腫瘤と体尾部主膵管の不整拡張をみた.術中膵管造影では尾側膵管は高度に拡張し壁不整と分枝の造影不良を認めたため,尾側への膵管上皮内進展を伴う膵頭部癌と診断し門脈合併切除を伴う膵全摘を行った.病理組織では膵頭部に癌腫を認め,癌は主膵管および分枝上皮内を尾側まで進展していた.膵癌の膵管造影で,分枝の造影不良を伴う尾側主膵管の著明な不整拡張像は癌の上皮内進展によるもので膵の切除に際し注意を要する.
索引用語
pancreatic cancer, total pancreatectomy, intraoperative pancreatography
日消外会誌 24: 2056-2059, 1991
別刷請求先
柴田 佳久 〒466 名古屋市昭和区鶴舞町65 名古屋大学医学部第1外科
受理年月日
1991年3月13日
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