症例報告
腹部腫瘍との鑑別が困難であった腸間膜結核の1例
菊池 嘉一郎, 飯田 修平
練馬総合病院外科
腫瘤を形成する腹部結核はまれな疾患であり,その診断に苦慮することがある.われわれは腹部腫瘍との鑑別が困難で,試験開腹により診断された腸間膜結核の1例を経験したので報告する.症例は24歳フィリピン人女性で,臍やや左に鶏卵大の圧痛を伴う腹部腫瘤を認めた.両親に肺結核の既往があるが本人には認めなかった.Computed tomography(CT),超音波検査上,腸間膜由来と思われる径1~4 cm大の多数の腫瘤を広範囲に認めたが,消化管造影および腹部血管造影では異常所見は認められなかった.確定診断に至らず試験開腹を施行した.腹水少量で,腹腔内の癒着は全く認めなかった.小腸間膜全域に,黄色で著明に腫大した大小不同のリンパ節を多数認めた.生検したリンパ節より結核菌が証明されたため抗結核剤投与を開始した.腹部結核では,腸間膜リンパ節の著明な腫脹を認める例があり,注意を要する.
索引用語
mesenteric mass, tuberculous lymphadenitis of mesentery
日消外会誌 24: 2065-2069, 1991
別刷請求先
菊池嘉一郎 〒176 練馬区旭丘2-41 練馬総合病院外科
受理年月日
1991年3月13日
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