原著
残胃癌の統計的および臨床病理学的研究―B-II法残胃の癌発生リスクについて―
近藤 建, 山内 晶司, 佐々木 隆一郎*, 秋山 清次, 伊藤 勝基, 渡辺 正, 横山 泰久**, 高木 弘
名古屋大学医学部第2外科, 同 予防医学*, 横山胃腸科病院**
残胃癌発生リスクを評価する上で,初回手術後長期経過例の検討が必要である.1960~1964年の良性疾患に対するすべての胃部分切除2,613症例に対するアンケート調査を行い,20年以上の経過を確認したBillroth-I(以下B-II)法756例,Blllroth-II(以下B-II)法299例を対象として残胃癌発生率を検討した.残胃癌の発生はすべて男性でB-I法に2例,B-II法に4例みられた.人年法によると,初回手術時40歳未満のB-II法例では人口1,000人対0.539と最も発生頻度が高く,B-I法0.134の4倍であった.他方,26例28病変の切除残胃癌症例の検討では,B-II法例で吻合部癌の頻度が13/18(72.2%)とB-I法例の3/10(30%)に比べて有意に高く,特に経過20年以上ではgastritis cystica polyposa内に認められる吻合部癌の存在が特徴的であった.術後20年以上経過したB-II法はB-I法に比べて残胃癌発生リスクが高く,特に吻合部には逆流十二指腸液を含む癌発生要因が働いていることが示唆された.
索引用語
gastiric stump carcinoma, Billroth II, gastritis cysatica polyposa, duodenogastric reflux
日消外会誌 24: 2105-2112, 1991
別刷請求先
近藤 建 〒466 名古屋市昭和区鶴舞町65 名古屋大学医学部第2外科
受理年月日
1991年3月13日
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