原著
高齢者の肝癌に対する肝切除例の検討
亥埜 恵一, 山岡 義生, 高安 隆
京都大学第2外科(主任:小澤和恵教授)
1985年1月から1990年4月までに当教室で経験した肝切除例は521例である.うち肝細胞癌は308例で,3か月以上経過し外来を中心に確実な追跡調査が行われている271例について,70歳以上と未満に分け検討した.70歳以上は37例,13.7%であり,術前の肝の病態(機能検査および肝硬変合併の有無など),腫瘍の大きさ,肝切除範囲,術後合併症の発現頻度,30日以内の手術死は非高齢者のそれぞれとは有意差は認められなかった.また,累積生存率では4年72%で非高齢者群の4年35%に比べ有意に良好な成績を得た(p<0.05).
われわれは肝細胞癌に対してredox理論に基づいた十分な術前,術中,術後管理により拡大手術を行っている.高齢者に対する肝切除は,従来考えられている程には危険はなく,高齢者といえども積極的に拡大手術を行うべきと考えられた.
索引用語
hepatic resection in elderly, hepatocellular carcinoma
日消外会誌 24: 2136-2142, 1991
別刷請求先
亥埜 恵一 〒606 京都市左京区聖護院河原町54 京都大学医学部第2外科
受理年月日
1991年3月13日
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