症例報告
バルーンカテーテルによる肝静脈遮断併用下肝中央2区域切除の1例
奥田 康司, 谷脇 智, 安藤 和三郎, 重富 和治, 松本 敦, 牟田 幹久, 馬田 裕二, 才津 秀樹, 中山 和道
久留米大学第2外科
肝細胞癌に対し,従来の肝流入血遮断法に併用して,バルーンカテーテルによる選択的肝静脈遮断を行って肝中央2区域切除を施行した.カテーテルは術中経肝的に超音波ガイド下に経皮経肝的門脈造影の際のカテーテル挿入手技に準じて,右および中肝静脈それぞれに挿入した.切除線右側の右肝静脈に沿った切除の際は,肝門部でのグリソン氏鞘右枝遮断に併用してバルーンによる右肝静脈根部の遮断を,切除線左側の中および左肝静脈近傍に沿った切除の際は,Pringle法による流入血全遮断に併用して中肝静脈根部の遮断を行うことにより,良好な無血術野が得られた.肝授動も肝鎌状間膜の切離のみで切除しえた.術中出血量は1,100 mlで,術後の肝機能推移も良好であり,本法は系統的切除あるいは腫瘍が主幹肝静脈に接して存在する場合などで,肝切除の際,肝静脈からの出血が予想される例には有用な方法と思われた.
索引用語
hepatocellular carcinoma, occlusion of the hepatic vein, hepatic resection
日消外会誌 24: 2221-2225, 1991
別刷請求先
奥田 康司 〒830 久留米市旭町67 久留米大学医学部第2外科
受理年月日
1991年3月13日
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